青紫系遊色万年筆インクを語る
この投稿は「卓ゲ箪笥 Advent Calendar 2023」12/9担当の記事です。
箪笥に限らずアドカレというものに参加することが初めてです。こんにちは。
なにを書くか考えた結果、とりあえず好きなものについて語るか、というところに落ち着きました。お付き合いいただければ幸いです。
■はじめに
私は文房具というものが好きです。専門店・大型店に行けば時間を忘れて入り浸り、書店の一角に文具売り場を見つければ立ち寄り、何色も並べられたカラーペンを見れば収集欲が沸き、見たことのない新商品があれば思わず手に取って確認してしまいます。
なかでもここ数年は、万年筆コーナーを見ることが増えました。より正確に言うなら、万年筆やつけペン、そのインク、それらを使って書くための紙類等々、手書きを楽しむための文房具全般、です。
今回はそのなかでも、万年筆インクについて書き連ねていこうと思います。
万年筆のインク、と聞いてまず思い浮かべるのは何色でしょう。おそらく、多くの場合は黒あるいは濃紺ではないでしょうか。
ですが、たとえば「万年筆 インク」と検索してみるだけでも、検索結果にはさまざまな色のインクが出てきます。名の知れた大手メーカーから、全国各地の文房具店、個人クリエイターまで、毎日どこかで新色が発表されている、と言っても過言ではありません。
気付けば私の机にも、それなりの数のインク瓶が並びました。どの色もいい色なのはもちろんですが、特に好きなのは「青紫系遊色インク」です。
前置きが長くなってしまいましたが、ここから先はこの記事の本題、青紫系遊色インクについて、私の手持ちの紹介を交えながら語っていきます。
※本記事で載せている写真は、実際の色味に近くなるよう加工しています。
※お使いのディスプレイや周囲の環境によって、色の見え方は異なります。同じインクを使っても、完全に画像と同じ色になるとは限りませんのでご了承ください。
■PILOT 色彩雫「紺碧」
語っていきます、とは言ったものの、そもそもインクにおける「遊色」とはなんなのでしょうか。
その説明をするため、まずは遊色ではないインクをひとつ、紹介させてください。
こちらは大手文具メーカーPILOTが展開する「色彩雫(いろしずく)」シリーズのひとつ、紺碧というインクです。
色彩雫は日本の様々な情景をモチーフにしたシリーズで、紺碧もその名の通り、澄んだ青空が鮮やかな色で表現されています。可読性が高く、普段使いにもぴったりな一色です。
私はLAMYの紺色軸の万年筆に入れて使うことが多いです。軸色とインク色が揃って非常に映えるため、お気に入りの組み合わせです。
ご覧の通り、紺碧はシンプルな青色のインクです。画像内下、塗り潰したような筆跡の右側は、インクで書いた上から水筆でぼかしているのですが、元の色が薄まった色になっています。
では、このような通常のインクを見ていただいた上で、いよいよ遊色インクの紹介へと移りましょう。
■SAILOR「ネモフィラブルー」
青紫系遊色インクひとつめ、国内大手メーカーであるSAILORより、ネモフィラブルーです。
このインクは、関東中心に店舗を構えるジョイフル本田とSAILORのコラボ商品のひとつです。茨城のひたちなか海浜公園では、シーズンを迎えると丘一面にネモフィラが咲き誇ります。こちらはそんなネモフィラの青い花をイメージした、優しい青色が可愛らしいインクです。
あえて青色と言いましたが、ここで写真をよくご覧ください。水でぼかしたあたりに、青とは違う色が見えませんか?
ただ青が薄まった色ではない、紫色が見えますね。ネモフィラブルーは一見”青紫色”という一色に見えますが、書き方によって青と紫が分離するように現れることがあります。ひとつのインクの中から複数の色が現れる、これが「遊色」です。
……はい。ひとまず今回語る青紫系遊色万年筆インクがどんな特徴をもっているか、ということは伝わりましたでしょうか。
要点をまとめますと「万年筆インク」のなかでも「青紫色」でさらに「筆記時に複数の色が現れる」ものが、本投稿における「青紫系遊色万年筆インク」です。
青紫という色や、遊色インクがどんなものかという厳密な定義は、どこかで詳しい方が詳しく説明してくださっているかも知れませんが、この場では私判断で上記の特徴を持つものはアリとします。
さて、ここまで精一杯それらしく説明できるよう、語気を抑えて書き進めてきましたが、以降もこの調子で進めようとすると言いたいことを満足に言える気がしません。最低限の説明を終えたので、ここからはただただ「このインクのここがいい!!」を叫んでいこうと思います。
話は戻りまして、ネモフィラブルーです。
見えませんか?(見えますよね?)と投げかけたものの、ネモフィラブルーから現れる青色と紫色は、それほどかけ離れた色ではありません。実のところ、私がネモフィラブルーが遊色インクであると知ったのも、購入してからしばらく経ってからでした。
pic.4の「永」「a」などの文字は、万年筆でネモフィラブルーを使って書きました。
基本的に、遊色インクはペンなどで細く書くよりも、太字や筆で塗り広げた方が色の分離が出やすいです。また、書いた上から水でぼかしたり、インクに直接水を加えたり(加水と言います)すると、さらにはっきり色が分かれるものもあります。
ネモフィラブルーもその傾向があり、画像のように万年筆で書いた文字だと「少し紫寄りの青いインク」という印象にとどまります。画像下の瓶柄を塗ったときに青と紫の2色が現れ、そこで遊色なのだと気付きました。
pic.2ではぼかすことで紫色が見えていましたが、こちらは比較的青色が分離して出ています。そのときどきで強く出る色が変わることも、遊色インクの面白いところです。
遊色インクは必ずしも「これは遊色インクです」と売られているわけではありません。買ったときは知らなかったけど、使ってみたら予想外の色が出た、ということもあります。私にとってのネモフィラブルーも、そんな発見をくれたインクのひとつです。
■石丸文行堂 カラーバーインク「Hot Bull Shot」
次にご紹介するのは、長崎県に本店を構える老舗文房具店、石丸文行堂さんが展開するカラーバーインクから、Hot Bull Shotという名の一色です。
カラーバーインクシリーズは「バーでカクテルを楽しむように、その時々の気分に合わせて色を選べるオリジナルインク(商品紹介ページより引用)」で、すべてのインクにカクテルの名前がつけられています。
Hot Bull Shotは2022年冬の限定色として発売され、残念ながら現在は取り扱いが終了してしまっているのですが、素敵な色なのでいつか復刻販売されることを願っています。そんなHot Bull Shotの写真がこちらです。
ぱっと見て、おや、と思ったかも知れません。青紫系遊色インクを語ると言いながら、二色目にしてこれは青紫色だろうか、と。
加水した部分はかすかに紫色が見える……ような気がしますが、本当にうっすらとです。青紫と言うよりもグレー系に近い印象を受けます。私も初めてこのインクを使った時「こんな色だったっけ?」と思ったものです。
私がインクを買うときの一番の理由は「そのインクの色が好き」です。Hot Bull Shotの発売が発表されたとき、紹介写真の鮮やかな紫と遊色するさまに一目惚れして購入を決めました。そのときの紹介はこちらです。1枚目の写真とか、とても綺麗な紫ですよね。この色のイメージがあったので、実際に書いた色を目にして驚きました。
が、Hot Bull Shotに真に驚かされるのはここからです。次の写真をご覧ください。
お分かりいただけますでしょうか。
pic.7はトモエリバーという紙、pic.8は石灰素材紙とバンクペーパーそれぞれに書いたHot Bull Shotです。トモエリバーではMDホワイトよりも紫色が、さらには遊色インクらしく、ぼかしたところに緑やピンク、青が現れています。石灰素材紙では遊色は控えめになり、全体が暗い紫色です。そしてバンクペーパーは面白いことに、緑色になっています。書いた直後はほかの紙同様に紫っぽいのですが、乾くにつれてどんどんこの色に落ち着いてきました。
そうです。書く紙が変わると、インクの色も変わるのです。
Hot Bull Shotはこの紙の違いによる色の変化が顕著で、ひとつのインクでさまざまな表情をみることができます。今回載せた例以外にも、まだまだ私が知らない顔を隠し持っていることでしょう。次に書くときはどんな姿を見せてくれるのか、楽しみでなりません。
実はこの紙による色の違い、先ほどの石丸文行堂さんの紹介ページでも中盤過ぎでしっかり触れられています。とはいえ私は最初の青紫色が強く印象に残っていたので、自分で書いて改めてその色の違いに驚きましたが。紹介ページのMDクリームは、同じMD系であるpic.6のMDホワイトに近い色をしています。コスモエアライトは私は未所持です。
こんなふうに、インクにハマるとそれを使う紙に、紙にハマればノートメモ帳原稿用紙と、芋づる式に興味関心が広がりかねません。楽しいですね。
■薫月文具堂「君待雨」
お次はオンラインショップの薫月文具堂さんより、君待雨(きみまちあめ)です。
輸入した中国メーカー製インクを中心に取り扱う薫月文具堂さんですが、この君待雨はお店のオリジナル商品です。
君待雨を紹介する前に、薫月文具堂さんについて一語りさせてください。このお店、なにがすごいって遊色へのこだわりがすごい。本当に、すごい。なぜなら店主が遊色が好きだから。
まず君待雨を含むオリジナルインクシリーズ、これはすべて遊色インクです。定期的に新色も作られ、現在全17色(投稿日時点)。そして輸入品のDREAM INKシリーズ、これもやばい。ショップのページを見ていただければ一目瞭然なのですが、色数がとにかく豊富。そしてその多くがこれまた遊色です。このほかにもいろいろな商品を扱ってくださっていて、私は今のところ薫月文具堂さん以上に遊色インクに特化したお店を知りません。
あと、購入時に季節のポストカードや試筆紙、試筆インクを同封してくださることがあります。嬉しい。先に載せたHot Bull Shotの石灰素材紙とバンクペーパーも薫月文具堂さんにおまけで頂いたものです。
それでは、そんな遊色インク特化の薫月文具堂さんより、君待雨。ご覧ください。
出ました!! ラメインクです!!!! 素敵!!!!!!
万年筆インクのバリエーションにおいて、今や欠かせないラメ。その色や粒子の大きさ、材質、光の反射の仕方など、ラメ自体もインク色に負けず劣らずたくさんの種類があります。
先述したように、薫月文具堂さんのオリジナルインクはすべて遊色なのですが、君待雨を見ていただいた通り、さらにラメが入っています。遊色インクかつラメインクなのです。なんて贅沢なんでしょう。嬉しい。
私はこの記事を書いている時点でまだ君待雨と平安夜の2色しかこのシリーズを買えていませんが、あわよくばほかの色も買い揃えたいと常々思っています。「ぬばたまの」とか絶対好き。「朧月」はお試しで頂いたことがあり、これも面白いくらい遊色するインクでした。
ということで、君待雨というインクを詳しく語っていきましょう。
まずはなんといっても遊色が美しい。加水した部分が青と紫に分離しているのがはっきりと分かります。さらに君待雨の場合、塗り潰した面の色だけでなく、文字や線など比較的細い部分でも遊色を確認することができます。右上の8をつなげたような線に注目すると、インク溜まりの縁が水彩境界のように青くなっているのが見えますでしょうか。
そしてこの紫色のラメです。とてもきれい。この写真を撮るために光の下でああだこうだと紙を傾けてラメがきらめく角度を探し求め、そのうち写真関係なくインクを眺めてにやける時間を過ごしました。まれによくあります。
薫月文具堂さんインクのラメは比較的粒子が細かく、書いたインクの表面を覆うように乗ります。pic.9〜11を見ると、明るい紫色が出やすいインクのように思えますが、これはインクの上にラメがきているからです。
インク内のラメは沈殿するので、使うときには瓶を振ったりマドラーを使ったりして、底にたまったラメを攪拌させます。ここであえてラメの攪拌をせず、上澄みの部分を使うと、ラメを含まないインク本来の色を見ることができます。
君待雨でも、なるべくラメを含まないよう書いてみました。それがこちらです。
どうでしょうか。先の写真よりも落ち着いた色に見えませんか? ラメの紫がないため、塗り潰したインクが遊色している様子もさらにわかります。加水していない部分まではっきり紺色と紫に遊色していますね。
また、ラメなしの色を見てからもう一度ラメありの写真を見ると、ラメが入ることで格段に華やかなインクになっているのだと実感します。場面によって攪拌の具合を調整し、色を使い分けることも楽しそうです。
ちなみにどちらが好きかと問われたら……私は君待雨の場合はラメあり、です。インク瓶開ける前にがっつり振ります。
ラメインクって書いて綺麗なのはもちろん、インク瓶の中でラメが渦巻く様子が本当に綺麗なんですよ。沈んでいたラメがぶわりと舞い上がって、インクがまるで別物のような色で波打って、さながら万華鏡のようになるのです。うまく動画が撮れなかったので載せてないんですけど……!
■STARRY INK 星墨「独角鯨尾巴」
次にご紹介しますは、独角鯨尾巴というインクです。ちょっと変わった名前ですね。「イッカクテイル」と読みます。
先ほどの君待雨と同じく、薫月文具堂さんで購入しました。こちらはオリジナルインクのシリーズではなく、輸入品の中国インクのひとつです。薫月文具堂さんが遊色特化であることはすでに書いたとおりですが、国内でこれほど多く中国インクを扱っているという意味でもほとんど唯一無二だと思います。(私が知らないだけだったら申し訳ない……!)
さて、独角鯨尾巴。これも綺麗な青紫、綺麗な遊色です。文字部分は全体的に紫が、加えて塗り潰した部分では遊色した青やピンクが見られます。特に加水した箇所の分離が顕著で、もはや「このあたり」と説明する必要もないくらいですね。右上の線は青と紫がゆらいでいて、なんともいえない色合いになっています。
惚れて買いたいと思いながらも、諸々の理由から買えていないインクはそれこそ数え切れないほどあります。この世にはあまりにもたくさん素敵なインクがあるので、泣く泣く見送らざるをえないのです。
買えていないインクのなかでも「今は買えていないがいつか絶対買う」と決めたものを私は「概念積みインク」と呼んでいます。独角鯨尾巴もこの枠でしたが、このたびめでたく積みを崩せたので、よろこびもひとしおです。
独角鯨尾巴は私が薫月文具堂さんを初めて見た時からずっっっと気になっていて、1年半くらいあたためてやっと手にすることができました。写真で見ていた以上に実物が美しくて、買えて良かったと心底思います。
では、私がなぜそれほど独角鯨尾巴にひときわ惹かれたのか。それは、このインクがある珍しい特徴を持っているからです。
なんとこのインク、温度や湿度で色が変わります。
温度や、湿度で、色が、変わります。
トモエリバーに書いた独角鯨尾巴を、室内と屋外でそれぞれ撮影したのがこちらです。
pic.14は室内での様子です。紫は紫でも赤みが強く、場所によってはピンク色と呼べるほどです。塗りつぶした縁だけ青くなっていて、赤紫色との差がよくわかります。
pic.15は屋外で撮影しました。昼日向だったのでpic.14よりも暖かく、湿度も高い環境です。室内での色と比べると、全体的に赤みが引き、青っぽくなりました。
上のように、ひとつ書いたものを違う環境で見ても色が変化しますし、インクが紙に乗った瞬間から乾くまでの間にも移り変わっていきます。色の分離という遊色に加え、独角鯨尾巴は全く別の理屈でも色変化を起こすのです。
いうなれば、変化の軸がほかのインクよりも多い。こうして写真を載せてみてもその魅力を伝えるには全然足りないのが悔しくてなりません。こんなに面白いインクなのに……!
よりわかりやすい色変化は、薫月文具堂さんの商品ページからサンプル画像をご覧ください、ぜひ。この記事の下部にまとめておりますので。
すでにほかのインクとは一線を画す特徴を持つ独角鯨尾巴ですが、この子はまだ実力を隠し持っています。
別添えの! ラメが!! あるんです!!!
こんなに美しいインクにさらにラメを入れてしまっていいんですか入れます嬉しい可愛い綺麗ヤッタ〜〜〜〜〜!!!!!
前提として、ラメインクはそうでないインクに比べて扱いに注意が必要なものです。万年筆インクという括りではありますが、ラメインクをそのまま万年筆に入れると、詰まりの原因になってしまうことがあるからです。数百円〜千円台ほどのお手頃な万年筆であればラメインクを入れることもありますが、基本的にガラスペンなどつけペンでの使用が想定されていることと思います。
ラメが別添えであることの何がありがたいって、万年筆で使う時はそのまま、ガラスペンでラメが欲しい時には入れる、というようにシーンによって好きな使い方ができることです。さらには自分でラメを入れるので、ささやかなきらめきが欲しい時は少しだけ入れたり、逆にたっぷり入れてほぼラメ液みたいな使い方をしたり、もう思いのまま。嬉しすぎる。ありがとう独角鯨尾巴。
付属するラメの色はシルバー系です。青紫色の中で白く輝く様子は、まさにイッカクが泳ぐ海で反射する日光のよう。ラメの量によってはインク色を覆い隠すほど白銀に輝き、これまた新しい独角鯨尾巴を見せてくれます。
あと別添えラメで嬉しいことってもうひとつあって……独角鯨尾巴”以外”のインクにも入れることができちゃうんですよ……なんという背徳感。まだ試せていないのですが、たとえば最初のネモフィラブルーにこのラメを入れたらとても綺麗だと思いませんか? 夢が広がってしまいます。ありがとう独角鯨尾巴(2回目)。
■石丸文行堂 長崎美景「雲仙フロスティブルー」
長々と書き連ねてきたこの記事も、最後のインクとなりました。ご紹介しますのはHot Bull Shotと同じく石丸文行堂さんより、雲仙フロスティブルーというインクです。
長崎の美しい景色をイメージした「長崎美景」からは、インクのほか万年筆やボールペンも発売されています。長崎、そして文房具への愛があふれる、どの商品もとても素敵なシリーズです。
インクを見る前に、その外装を見てください。長崎美景インク共通の外箱には、長崎の移ろう空模様が箔押しで表現されています。箔押しっていいですよね。あるだけで幸せ。パッケージに印刷されているのは、インクが表す雲仙岳と霧氷、そのバックに広がる澄み渡る青空の写真です。
では、そんな雲仙フロスティーブルーのインク色、ご照覧ください。
シンプルな、しかしその内になにかを秘めたような青色。この写真ではそれほど色が分離してはいませんが、塗り広げた青の下になにか違う色が隠れているのが伺えます。私は、この雲仙フロスティブルーの青色が大好きです。
MD用紙という違う紙に書いた雲仙フロスティブルーです。MDホワイトに比べてクリーム色の紙で、ただ書くだけでもインク溜まりや濃淡がわかりやすくインク筆記に適しています。
どのように書いても良い色を見せてくれるインクですが、やはり雲仙フロスティブルーという名前を冠しているからでしょうか。雪や冬に関連する言葉を書いたときはいっそう凛とした雰囲気が映えるように思えます。
pic.20では少しくすんだような青だったのが、pic.22ではスカイブルーと薄紫に遊色しています。ふんわりとした色に見えて、その実とても鮮やかな色なのです。
これは雲仙フロスティブルーと、もう一色「ワルプルギスの夜」という黒いインクを使って書いた七宝柄です。青い部分を雲仙フロスティブルーで描いています。ここまでに載せた写真は、どれも少なからず実物の色味と近くなるよう加工していましたが、この写真はしていません。
この図柄は、私が雲仙フロスティブルーを使って書いたもののなかでもダントツのお気に入りです。パーツのひとつひとつに雲仙フロスティブルーの濃淡と遊色が現れていて、ときどき見返しては「このインクの美しさがよくでているな」と自画自賛してしまいます。
これまでに紹介したインクも、今回は語れなかった青紫遊色以外のインクも、どれも素敵で好きです。それでも、どれかひとつ好きなインクを選べと言われたら、私は雲仙フロスティブルーを挙げます。
もう私の御託とかいい。どうかこの美しさをすみずみまで見てください。石丸文行堂さんの商品ページの写真もおすすめです。
■むすび
この項を書く前に、推敲がてら軽くここまでの文章を読み返してきました。マジで「良い」と「好き」と「綺麗」しか言っていない。それを言うために書いたので正しいです。綺麗でしょう、インク!!
今回は青紫遊色、かつ自分が持っているものに限定して紹介しましたが、冒頭に書いた通り今や一生かかっても使い切れないインクが世界中で発売されています。さらに自分でインクを調合して、好きな色を作ることができる、なんてものもあります。
また、今回はインクに集中して、極力それ以外の文具の話をしないよう心がけていました。なぜなら話が脱線しまくって収拾つかなくなることが目に見えているからです。本当は万年筆本体やガラスペンもいろいろあるんです……!
それらはまた別の機会があれば、語れたらいいですね。
ここまでお読みいただきありがとうございました。良き文房具ライフをお過ごしください。
本投稿で使用したもの まとめ
■インク
PILOT 色彩雫 紺碧(PILOT 製品情報ページ)
SAILOR ネモフィラブルー(ジョイフル本田 オンラインショップ商品ページ)
石丸文行堂 カラーバーインク Hot Bull Shot(石丸文行堂 発売お知らせページ)
薫月文具堂 君待雨(薫月文具堂 商品ページ)
STARRY INK 星墨 独角鯨尾巴(薫月文具堂 商品ページ)
石丸文行堂 長崎美景 雲仙フロスティブルー(石丸文行堂 オンラインショップ商品ページ)
哲磋工房 ワルプルギスの夜(哲磋工房 オンラインショップ商品ページ)
■紙類
MDホワイト(トラベラーズカンパニー スパイラルリングノート)
MD用紙(「余白」を愉しむ MDノート ジャーナル)
トモエリバーFP(SAKAEテクニカルペーパー ノート)
フールス紙(ツバメノート インクコレクションカード)
ノウト ぬり絵じゃないぬりたくり絵ポストカード(遊星商會編)
■ペン類
伊勢硝子 ガラスペン 常世
LAMY AL-star EF
どこで買ったか忘れた水彩絵筆